漫画『ゴールデンカムイ』の人気キャラクター「尾形百之助」。
すご腕の狙撃手としてのカッコよさ、キレ者と猫っぽさのギャップで多くの読者の心をつかみましたが、その行動は最後まで謎めいていました。
尾形の目的は何だったのでしょうか?
この記事では尾形の登場シーンや作者インタビュー、ファンブックなどの情報をもとに、尾形の目的、その目的を達成できたのかどうかを探ります。
スポンサーリンクゴールデンカムイ尾形の目的は「鶴見中尉を理解者にすること」?
今回考察するのはヤングジャンプの看板漫画の一つ、この人気作品。
明治後期、アイヌたちが隠した金塊およびその在りかを示す刺青人皮の争奪戦が描かれた本作。
この争奪戦に関わる各陣営を渡り歩き、争奪戦をかき回した男「尾形百之助」の目的について考察していきます。
スポンサーリンク尾形とは?
狙撃を終えた尾形[1]野田サトル著『ゴールデンカムイ』(集英社)単行本14巻137話より引用
まずは簡単に尾形についておさらい。
尾形百之助は鶴見中尉率いる第七師団27聯隊(れんたい)の一人で位は上等兵、作中№1のすご腕狙撃手。
暗い瞳、狙撃を成功させたときや会話の中で行われる自分の髪をなでつける仕草(通称セルフなでなで、セルフよしよし)が特徴。
- 1巻4話で第七師団の一人として登場
- 6巻59話で金塊を狙う別勢力である土方歳三に自分を用心棒として雇うよう売り込む
- 14巻で争奪戦の仕掛け人ウイルクや杉元を撃ち、それを隠してアシㇼパとともにロシアへ
- 19巻188話でアシㇼパに自分を討たせようとして右目を失う
- 23巻で土方陣営に戻る
- 25巻の札幌ビールでの戦いで土方陣営から離れる
- 28巻279話で中央政府のスパイだと確定
- 29巻では単独で最後の戦いに参戦…
初登場からずっと手ごわく謎めいている尾形[2]左から単行本1巻4話、6巻59話、14巻138話、23巻222話、29巻283話より引用
人当たりはいいとは言えないものの、世話になる派閥には自らが狩猟したものを差し出す律義な猫のような一面もあり、ちょっと神経質なところもある様子。
片目でも、無理と言われても獲る/道具にこだわり、歯茎から毒が入るのを嫌がる[6]左から単行本23巻223話、9巻83話、10巻91話、11巻104話より引用
以上のことからも分かるとおり、尾形は壮絶な生い立ちを経て複数の派閥に所属し、最後は一人で行動していました。
何が欲しい、何がしたいなどほとんど口にしなかったため、目的が不明でした。
しかし、最後の戦いでついに目的を口にしました。
詳しく見ていきましょう。
スポンサーリンク尾形の目的は「鶴見中尉を理解者にすること」だと考察
目的を語る尾形[7]左右ともに単行本31巻304話より引用
尾形の目的は、鶴見中尉を理解者にすることだと考えます。
根拠としては次の3つ。
- 作者のインタビュー
- 列車の上での対話
- 鶴見への執着
一つずつ説明していきます。
スポンサーリンク根拠①作者のインタビュー
作者である野田サトルさんがインタビュー記事で尾形の最期について語っていたことを紹介します。
「最後に残る鶴見中尉がミステリアスなので、尾形までよく分からないキャラだと受け止められてしまえば良くないと思ったんです。」
「多くの読者さんが納得する決着にできるよう準備を重ねて丁寧に描いたつもりです。」
読売新聞オンライン「読者を真正面から受け止め、納得してもらえると信じて描いたラスト――『ゴールデンカムイ』完結、作者が語る制作秘話<中編>」より一部引用
これは尾形については作中で決着をつけているということ。
尾形はこれまで嘘をつき、けむに巻くような発言をたくさんしてきたので、31巻の列車の上での発言もこのまま受け取っていいのかと悩む方もいました。
しかしこのインタビューから最後の戦いである列車の上で起こったこと、語られたことを素直に受け取っていいと取れます。
根拠②列車の上での対話
尾形は単行本31巻にて最後の戦いが行われている列車の上で鶴見と対面。
今後は鶴見がサポートに回り、まずは「尾形百之助少尉」となり、いずれは第七師団長になることを望んでいると明かします。
そして鶴見から「「第七師団長なんぞ偽物でも成り上がれる」と照明したいのだろう?」(31巻304話)と問われると…
喜色満面尾形と対照的な鶴見とアシㇼパ[8]単行本31巻304話より引用
これまで見せたことのない笑顔で力強く肯定。
この表情から「出世<鶴見からの理解」だと分かります。
根拠③鶴見への執着
列車の上で尾形は第七師団長の椅子および鶴見への執着を初めてあらわにしました。
しかし実は、作品を見てみると前々から描かれていました。
尾形の執着は作中で描かれていた?[9]左:単行本23巻227話、右上:10巻93話、右下:10巻97話より引用、赤丸は追記
まず軍服。
ゴールデンカムイでは杉元なら帽子、アシㇼパならマキリといった具合に自身の持ち物に思い入れがあるというパターンが多いです(明治時代だから頻繁に物を変えられないということもありますが)。
尾形は自らが脱走兵だとしつつも軍服も肩章もそのまま身に着けていて[10]単行本10巻93話にて、第七師団への執着を感じられます。
あとは鶴見が愛について語る場面。
鶴見は柔道の師に対し、兵の力を引き出すためには愛が必要だと語っていて、その背後には自身の部下たちの姿が描写されていました[11]単行本23巻227話にて。
月島、宇佐美、鯉登、尾形です。
この描写があった23巻で尾形は土方一派に属していましたが、心は鶴見サイドにあり、鶴見もそれを自覚していた節があると表していたのでしょう。
これらのことから尾形の目的は鶴見であると考えました。
スポンサーリンクゴールデンカムイ尾形の目的についてファンの意見は?
尾形の目的が語られたシーンを読んだファンのツイートの一部をご紹介します。
スポンサーリンク尾形は出世はしても幸せにはなれなさそう…
Twitterでは尾形の目的に対し、月島や宇佐美が前に言っていたこと(出世を求めている[12]単行本8巻78話にて、鶴見に愛してもらいたかった[13]単行本25巻243話にて等)が当たっていたのかと驚くファンが多かったです。
確かにこれまでのクールな尾形を思えばギャップがあります。
もちろん出自や出世を求める経緯を考えれば納得できるし、尾形が「金塊を手に入れて贅沢したい」という願望を抱いている方がイメージに合いませんよね。
また、尾形は出世しても幸せになれないのではないかと案じる声も結構ありました。
尾形は自分には「愛」や「祝福」が欠けているとしていたので、代わりとして「高い地位」を得てもそこで満足とはならなさそうです。
スポンサーリンクゴールデンカムイ尾形の真の目的「見て」は鶴見ではなくヴァシリが果たした
尾形は鶴見を傍に置き、第七師団長となりたいと語りました。
その想いに嘘はないでしょう。
ただ鶴見の反応からは尾形のハッピーエンドが想像できません。
鶴見は尾形の話を聞いても険しい顔をしただけ、一人になると満州に行くと語り[15]単行本31巻309話にて、ウイルクへの憎しみから目を離しませんでした[16]単行本31巻313話にて。
また、尾形が残る車両の上に毒矢を置きっぱなし。
尾形退場時の見送る顔も真っ黒で、直後に描かれた鯉登や月島に対する「道連れには出来ん」(単行本31巻310話)の顔とギャップがありました。
鶴見の反応[17]右上:単行本31巻308話、左と右下:310話より引用
鶴見にとって尾形はやはり「駒」だったのかもしれません(もし31巻エピローグ部分にあった山猫の絵を落札したIT企業が鶴見の会社(情報将校だったのでIT企業を興していても不思議ではない)だったら多少の思い入れはあったということになる…?)。
そして尾形の最期を見る限り、彼には無自覚な真の目的があり、それに影響したのはアシㇼパやヴァシリだったと考えられます。
スポンサーリンク尾形の最期には何があった?
尾形の最期は、自らの罪悪感に押しつぶされるように描かれました[18]単行本31巻310話にて。
流れとしては列車の上で杉元ともみ合いになり、アシㇼパが毒矢で尾形を攻撃、毒で錯乱した尾形は自分に発砲して列車から落ちたという感じです。
心情的には以下のような動きがあったのだと推察します。
最初は戸惑うも勇作の幻から自身の結論を聞く尾形[19]左右ともに単行本31巻310話より引用
まず尾形には二つの前提があります。
- 戦場で人を殺さず自分を偽らないまま亡くなった高潔な勇作とアシㇼパを同一視
- 自らを欠けた人間で祝福されず愛されない人間だと思っている
しかし、アシㇼパが杉元を守るため覚悟を決めて毒矢を放ったことにより、愛で人は変わること、汚れることもいとわないのだと知り、前提がひっくり返ったようです。
人は変わるのなら両親にも愛し合った瞬間があったかもしれない、自分は欠けていない子となる、それなら誰かに愛されてもいい、義弟の勇作に愛されていてもいいと考え至ったのでしょう。
そこに気づいたあと自分を撃ったのは、毒で錯乱したというよりは彼らを殺めた罪悪感、あとは罪悪感に気づかせてくれたアシㇼパを罪を背負わせないためでしょう。
尾形がこれまで杉元に張り合っていたこと、杉元がロシアで同様のことをしていたことも動機の裏付けとなりそうです。
杉元に張り合う尾形、アシㇼパに罪を背負わせないよう尽力する杉元[20]左上:単行本19巻187話、右上:188話、左下と右下:12巻114話より引用スポンサーリンク
尾形の真の目的は「見て」
尾形は鶴見を求め、アシㇼパは尾形に愛と罪悪感を認識させました。
二人とも尾形に大きな影響を与えていたと言えます。
しかし、尾形がずっと求めてきたのは「見て」ということ。
尾形の大事な人たちに取った行動でそれが分かります。
尾形は母に「見て」と言い、父にも勇作を失ったのだから自分を見てほしいと求め、軍に入ったあとは金塊争奪戦を乱して鶴見が自分を無視できないよう仕向けています。
「見て」[21]左右ともに単行本31巻304話より引用
ただ母と父、鶴見が見ることはありませんでした。
尾形が愛されていないと思い込んだのは、この「見て」が満たされなかったからとも考えられます。
それでも誰にも見られてなかったわけではありません。
ヴァシリが見ていました。
スポンサーリンク尾形の真の目的はヴァシリが果たした
ヴァシリは尾形と同い年[22]ファンブック質問箱Q59にて二人はタメとの回答ありの狙撃手で命を狙いあう関係。
一見、尾形にとって重要な人物には見えませんが、尾形はヴァシリを「手練れの狙撃手だ」(16巻160話)、「あんな腕前の人間は滅多にいない」(26巻254話)と評価。
ロシアから札幌まで追いかけてくるという価値観にも理解を示していました[23]単行本26巻254話にて。
さらにヴァシリは本質を見抜く力を持つ絵描き[24]単行本22巻220話、多重人格の平太の本質を見抜くような絵を描いた。
これらのことから二人はライバルであり互いの理解者であると分かります。
そしてヴァシリはずっと尾形を追いかけ、「見て」いました。
ロシアで尾形に負けたヴァシリ、杉元とお絵描きで会話[25]左:単行本17巻161話、右:21巻203話より引用
つまり「自分が認めた相手に見てもらう」ことが尾形の真の目的なら、ヴァシリがそれを叶えたことになります。
ヴァシリが尾形の死を見届けたことは後年発表されたという絵画「山猫の死」で分かっています。
どういう状況だったか詳細は明かされていません。
分かっているのは3億もの価値があること、山猫が満足そうな顔をしていること。
尾形が祝福されて生まれた子だと分かったからなのか、あるいはヴァシリと死に際に言葉を交わし、ヴァシリが「見て」いたと知ったからなのかもしれません。
ヴァシリは尾形を最期まで見ていた[26]3画像とも単行本31巻314話より引用
\次の記事もオススメ/
スポンサーリンクまとめ
『ゴールデンカムイ』のキャラクター尾形百之助の目的について考察しました。
尾形の目的は鶴見のサポートを経て第七師団長になること。
ただ尾形の最期を見る限り、真の目的は「見て」もらうことで、その目的はヴァシリが遂げたと考えました。
また、尾形を調べるなかでゴールデンカムイは奥が深く、果てしない魅力があると再確認。
また色々な考察検証を行っていくのでぜひチェックしてください!
以上、「ゴールデンカムイ尾形の目的は鶴見中尉を理解者にすることだと考察!その根拠に迫ってみて分かった驚愕の結論とは?」をお伝えしました。
スポンサーリンク脚注
↑1 | 野田サトル著『ゴールデンカムイ』(集英社)単行本14巻137話より引用 |
---|---|
↑2 | 左から単行本1巻4話、6巻59話、14巻138話、23巻222話、29巻283話より引用 |
↑3 | 野田サトル著『ゴールデンカムイ公式ファンブック 探究者たちの記録』(集英社、以下ファンブック)質問箱Q25でトメとは尾形の母の名と回答 |
↑4 | ファンブック質問箱Q17にて食べかけの食事を残して失踪したとの回答あり |
↑5 | 3画像とも単行本11巻103話より引用 |
↑6 | 左から単行本23巻223話、9巻83話、10巻91話、11巻104話より引用 |
↑7, ↑21 | 左右ともに単行本31巻304話より引用 |
↑8 | 単行本31巻304話より引用 |
↑9 | 左:単行本23巻227話、右上:10巻93話、右下:10巻97話より引用、赤丸は追記 |
↑10 | 単行本10巻93話にて |
↑11 | 単行本23巻227話にて |
↑12 | 単行本8巻78話にて |
↑13 | 単行本25巻243話にて |
↑14 | 左から単行本22巻、17巻、26巻書影より引用 |
↑15 | 単行本31巻309話にて |
↑16 | 単行本31巻313話にて |
↑17 | 右上:単行本31巻308話、左と右下:310話より引用 |
↑18 | 単行本31巻310話にて |
↑19 | 左右ともに単行本31巻310話より引用 |
↑20 | 左上:単行本19巻187話、右上:188話、左下と右下:12巻114話より引用 |
↑22 | ファンブック質問箱Q59にて二人はタメとの回答あり |
↑23 | 単行本26巻254話にて |
↑24 | 単行本22巻220話、多重人格の平太の本質を見抜くような絵を描いた |
↑25 | 左:単行本17巻161話、右:21巻203話より引用 |
↑26 | 3画像とも単行本31巻314話より引用 |
コメント